研修の内容は?(その2)

 相続専門相談に登録するために行われる相続専門研修。その実際に行われた研修の内容は、どのようなものだったのでしょうか。

 

国税局資産課税課・審理専門官が考える相続税法(改正を踏まえ)

 平成27年1月1日からの相続について、大きな相続税法の改正が行われました。それに伴い、相続問題が強く関心をもたれるところです。

 今回の相続専門相談の取り組みについても、非常に好意的に受け止めていただき、国税局の資産課税課の審理専門官の方に、御講演をいただきました。後半は、弁護士とのディスカッションの中で、弁護士の対応としてどこまで認められるのか、相続税の課税としてどうなるのか、熱く議論が交わされました。

 一般の税理士の先生方は、毎年確定申告を行う、所得税や消費税の税法にはたけていらっしゃいますが、いざ、相続となると、国税局の資産課税課御出身の方にお聞きして、其のうえで、対応されるところだと思います。弁護士においても、相続事案の対応において、税法は密接なところとなります。税理士の先生方と連携をとることが重要なところです。

 今回の、この講義も、単に国税局の方にお願いしただけではなく、チーム員が相続税の基礎から応用までを整理し、弁護士としての疑問を踏まえたレジュメを作成し、講師の意見を踏まえながら資料も作っていったことが特徴です。

 納税分を踏まえ、兄が責任もって納税すると和解条項に載せたが、兄が納税しなかった場合のリスクや、その回避方法の議論や、具体的場面の課税のリスク、特例が受けられるように弁護士サイドから注意する点など、様々な観点から議論がなされました。

 

事例検討会

 ベテランと若手、20人程度を一組として、具体的な議論を行いました。事例を研修チーム員が作成し、その事例に基づいて、みなさんの経験や、気を付ける点を議論いたしました。司会の方には、研修チーム員の検討資料に基づき準備をいただき、司会の方から、参加者全員に次々とあてていただき、議論を交わし、理解を深めました。

 Q 土地の価格を判断する資料として、不動産鑑定士の意見書や不動産業者の調査結果のほか、公的なものとして、評価証明書や路線価は、それぞれどのようなものか。また、それ以外の資料として、何があるか。

 Q 遺言の際に認知症にかかっていたということで、遺言無効が訴訟上争われる場合、認知症の程度がわかる資料として、病院のカルテや看護記録のほかに、公的な記録等の資料があるが、それは、何か。どうやって取り付けるのか。長谷川式の意味は。他の診断方法は。

 Q 非上場株式の価格の基準としてどのような方法があるか。それぞれの特性と、本件においてはどの基準がなじむのか。判例はどのように考えられているのか。

 このような問いかけが司会からなされ、参加者がその経験や知識から回答していきました。上記の質問は、弁護士の誰もが、全員知っているというものでは必ずしもなく、さらにこれらの内容を掘り下げて議論をしていくことで、理解が深まりました。

 研修チーム員も、問題を作り、司会者用の解説書を作成する中で、膨大な資料を検索し、判例や学説を整理し、チーム員内や、委員会内で議論を交わしながら準備を進めてまいりました。

 事例検討会が、一番ためになる、とおっしゃっていただけた、超ベテランの弁護士もいらっしゃり、準備の疲れが吹き飛ぶ瞬間でした。