相続専門相談にしか出来ないこと

 愛知県弁護士会 名古屋法律相談センター・一宮法律相談センターにおいては、相続に特化した、登録要件として経験年数、経験件数そして相続専門研修を受講し続けている相談員による相続専門相談を実施することとなりました。法律事務所は、日本に多数あるのですが、この相続専門相談にしか出来ないことがあります。

 

圧倒的多数の構成人数

 

 名古屋法律相談センターにおける相続専門相談に登録されている弁護士は、主担当270人、副担当200人、合計470人です(平成27年10月1日現在)。

 

 全国のいわゆる4大法律事務所と比較しても、そん色ない人数です(同一事務所ではないので、単純な比較はできませんが・・・)。

 

 とにかく、大勢の人数により構成されているため、出来ることがあります。

 

 それは、端的に言えば、相続についての専門性の高い弁護士の選択肢が増えるということなのです。

 

 弁護士と依頼者との関係は、信頼関係です。特に、相続については、長年のご家族の交錯した思いを解きほぐしながら対応していく必要があるので、なおさらです。弁護士との相性、というものがあると思います。

 

 もし、依頼した弁護士と、相性があわないな、と思われましたら・・・

 

 躊躇なく、もう一度、法律相談センターに行っていただき、「セカンドオピニオン」を求めてください。要するに、別の弁護士に相談をするということです。

 

 医師の場合と違って、法律問題、特に相続問題は、30分や1時間で、方針の全体像はわからないので、中には、「その弁護士の方針が正しいのか相談されても・・・」という弁護士もいるかもしれません。確かに、相続の場合は、そういう面が強いのですが、それでも、大まかな方針の違いは分かると思いますし、何より、「相性」については、30分あれば、ある程度わかるのではないでしょうか。

 

 この場合、相談料が、改めてかかってしまうのですが、一生に一度の大切な問題。弁護士選びも、慎重にしていただければと思います。

 

 そして、登録人数が圧倒的に多い、相続専門相談であれば、弁護士選びの選択肢も、多数存在するというのは、明らかでしょう。

 

 ただし、あまり選びすぎて、ちっとも、方針を自分で決めないのも考えものです。

 

 お医者さんを次々と変えて、ちっとも方針を自分で決めない患者のことを、「ドクターショッピング」といって、結局、治療成果としては、よくならないといわれているのだそうです。

 

 弁護士の場合も、同じです。自分で、良いと思った弁護士がいたら、その弁護士と二人三脚で、相続問題に取り組むことが大切です。

 

市民から見て、わかりやすい制度


 弁護士は、よく医者にたとえられますが、医者は、それぞれ、内科、小児科、外科・・・等、担当する科が明示されているため、受診するときに何が専門であるかすぐにわかります。


 これに対し、弁護士は、企業法務もやる、一般民事もやる、離婚もやる、相続もやる、刑事もやると、その対応分野が幅広いため、そのなかでも、特に何を専門的に行っているか、わかりづらいところでした。

 

 そこで、今回、相続専門相談においては、登録されている弁護士に継続的に相続専門研修を受けていただくことにより、専門性を高め、外部から見ても、法律相談センターにおいて、相続専門相談という形で、相談枠を作ることにより、わかりやすくしました。

 

 今までは、弁護士会に、「相続の専門の弁護士を紹介してほしい」といわれたときには、「相続は弁護士なら誰でもできますので、お気軽にご相談ください」としか言えなかったところ、これからは、「相続専門相談を行っていますので、そちらにご相談ください」ということができるようになったのです。

 

法律相談センターと、個々の法律事務所との関係


 愛知県下には、たくさんの法律事務所があります。そのほとんどの事務所において、相続問題の対応をしているものと思います。

 

 もちろん、相続専門相談に登録していない法律事務所で、相続問題において素晴らしい対応をされるところも、たくさんあると思います。

 

 誤解の無いようにしていただきたいのですが、相続専門相談として登録している弁護士しか、相続問題の対応をしてはいけない、などということは、決してありません。

 

 もともと、ご存じの法律事務所で信頼しているから、引き続き相談するということであったり、ホームページを見て、気に入った法律事務所にご相談したりすることも、正しいご選択だと思います。

 

 しかしながら、法律相談センターの良いところとしては、どの弁護士がいいかわからない、ホームページを見ても、弁護士を紹介されたとしても、ピンとこないときに、まず、法律相談センターに行っていただき、会ってみてから、相性が合うかどうか決められるということだと思います。

 

 また、すでに弁護士に依頼していたとしても、方針や相性に疑問を感じたら、法律相談センターにいって、別の弁護士の意見を聞くことが出来る、これも、法律相談センターの良いところだと思います。


 何より、その法律相談センターによる、相続専門相談員は、経験年数、経験件数において基準を満たす人に限定されているばかりではなく、相談員であり続けるために、高度な相続専門研修を受講しつづけ、研鑽しつづけた人であるということが、何よりの重要な点にあげられます。


 単に、経験件数が多かったからと言って、研鑽せずに漫然と事件に取り組んでいたとしたら、件数の多さだけでは意味がないということがいえると思います。そこに、研修という研鑽を経て、より専門性が生まれるのだと思います。

 

 法律相談センターは、個々の法律事務所と、事件を奪い合う関係にあるのではなく、法律相談センターの存在により(特に、今回の相続専門相談が出来た、当地区においては、なおさらなのですが)、お互いに切磋琢磨して、リーガルサービスの向上に努めるという、良い意味での緊張関係にあるのだと思います。

 

 今回の相続専門相談により、当地区の相続問題の対応力が向上し、全国から見ても、愛知県弁護士会所属弁護士は、相続専門相談員であろうとなかろうと、みな、相続問題に積極的に取り組んでいる地域、という評判になったらいいなあ、などと夢を持って取り組んでいます。